「機能信頼度」製品機能の品質バロメーター
製品を設計する際には製品仕様を作ります。
その製品仕様から製品の機能に展開しますが、その機能自体の品質が維持できなければ結果として仕様が満たせなくなります。
その「機能信頼度」を設計にどう関係していくか話したいと思います。
機能信頼度を高くしたいとき、設計時の機能信頼度によって機能維持の考え方に記述されているような変更が必要です。
仕様と機能の関係性
「機能信頼度」を話す前に、そもそも機能と仕様の関係を簡単に話したいと思います。
例として、「ノック式ペン」で考えます。
「仕様」としては「片手の親指操作だけでペン先を出し入れ」
「機能」としては「ペンの上部を押すとペン先が出る」、「もう一度押すと戻る」
「仕様」はあるべき姿
「機能」は「仕様」からあるべき姿にするための方策
の関係だと思っています。
「仕様」とは、あるべき姿。「機能」とは、あるべき姿にするための方策
「機能信頼度」とは
「機能信頼度」とは、簡単に言いますと「ほぼ機能の品質」になります。
先ほどの例の「ノック式ペン」で考えます。
機能は「ペンの上部を押すとペン先が出る」「もう一度押すと戻る」でした。
「機能信頼度」
1万回正常に「ペンの上部を押すとペン先が出る」「もう一度押すと戻る」が満たされる。
になります。
これは仕様から機能を展開した後にその機能自体が満たすことができるかどうかの度合いです。
「機能信頼度」≒「機能の品質」→「仕様の品質」につながる
機能の品質としては以下が挙げられます。
・機能の信用度(機能信頼度はこちらの意識が強い)
「機能信頼度」とは仕様から展開した機能を満たす度合い
「機能信頼度」落とすとどうなる?
先ほども述べましたように「機能信頼度」は「仕様の品質」につながっていきます。
・「機能信頼度」の低下
既存の製品からのモデルチェンジだった場合、今まであった仕様も少なからずあるはずです。
特に今までの製品の延長上の仕様は今まで以上の信頼度が高くないといけないです。
信頼度が低い(仕様を満たさない故障等が多い場合)と、顧客は「当然あるべきもの」と思っていたものが満たされないため、不満足になります。
それは満足できる部分があったとしても満たされません。
満足と不満足の関係は、「満足・不満足」を参照してください。
「機能信頼度」は、製品自体の「信頼度」につながります。
実際はその製品だけのものですが、にもかかわらず顧客は企業全体としての「信頼度」と混同して捉えてしまう傾向にあります。
そのため、「機能信頼度」が低下してしまい、顧客に周知されてしまうと企業全体として「信頼度」が低下したと捉えてしまいます。
それは、すでに販売済みの製品でもそうでなかったとしても「信頼度」果ては「機能信頼度」を低く捉えてしまうことになります。
・メーカーの考え方
メーカーの不具合確率(100万個に1個だとしても) だったとしても、購入し不具合に当たった顧客は100%不具合品。
そのため特に日本の製造業は「機能信頼度」を高くしている傾向にある。
そのため、製品の規格に対しても工程能力を加味した製品の製造を行っています。
・機能信頼度の業界による考え方の違い
「機能信頼度」はどんなものでもついてきます。
ですが、業界によりその信頼度の大きさが違って市場に出てきます。
機能信頼度を高くとる
製造業界
→リコールとなり、手直しに莫大な費用がかかる為
機能信頼度が比較的低め
サービス・ソフトウエア業界
→バージョンアップ等で済むため、 手直しにさほど金額がかからない
「機能信頼度」を見極めないと企業の価値も下がってしまう。
信頼性の傾向を掴むバスタブカーブ(故障率曲線)
バスタブカーブ(故障率曲線)と呼ばれ縦軸に「故障率」横軸に「時間経過」を表したグラフによって故障率の傾向が表されます。
バスタブのような形の曲線なので「バスタブカーブ」と呼ばれます。
時間の経過により初期故障期間、偶発故障期間、摩耗故障期間に分けられます。
故障率一定カーブ (CFR)
故障率増加カーブ(IFR)
故障率減少カーブ (DFR)の傾向が大きい場合
製造する上での欠陥等による故障です。
検査の工程がない、もしくは抜けてしまうような品質による場合でもこの傾向になりやすいです。
これは時間の経過とともに故障率が減少ていくタイプのものです。
故障率一定カーブ (CFR)の傾向が大きい場合
偶然に起こってしまう故障です。
規格の範囲が甘かったり、製品の使用範囲が想定を超えていた場合などが関連する故障です。
時間と関連性がなく一定の割合で故障するタイプのものです。
故障率増加カーブ(IFR)の傾向が大きい場合
設計や材質等の変更等でこのカーブの位置が変わります。
磨耗などの機械的な故障が時間の経過とともに増加していくタイプのものです。
この3つのグラフが一緒になってバスタブカーブを作ります。
モデルチェンジなどや対策に迫られた場合、どの傾向が強いのか判断して対応していけば対応しやすいです。
特にどの傾向が強い曲線になる機能か判断した方が良い
品質工学、機能の判断として分かりやすい本です。機能と品質について参考にしたい方はどうぞ。
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信頼性向上の対策
様々な要因で信頼性が上がらない場合があります。
「企画」「設計」「製造」の部署をまたいだり、「ヒューマンエラー」などの人為的ミスにより信頼性が上がらないこともあります。
信頼性向上の内容
ミスを誘発させない「代替」
ミスを起こさせない「簡素化」
ミスを気づく「異常の検出」
ミスを普及させない「対応展開」
・ミスを作らない「排除」
ミスになる原因そのものを作らない、あったら排除することです。
・ミスを誘発させない「代替」
ミスにならないように、なりにくいように別な物で代替えすることです。
・ミスを起こさせない「簡素化」
作業項目等を簡単にして、ミスの箇所を極力少なくすることです。
・ミスを気づく「異常の検出」
異常の発見装置や検査等で、ミスを気づいて止める方法のことです。
・ミスを普及させない「対応展開」
同じようなミスを他の箇所でも起こさないようにすることです。
これらを考えていく必要がありますが、その上で「リスク評価」をしていく必要があります。
ここでのリスク評価とは信頼性が失われた際にどうなるか?というものを考えていくものです。
品質基準は国や購入層によっても異なってきます。その為、リスク評価も異なってきます。
これらは、リスクアセスメントと考え方は同じです。
リスク評価を行なってそれに対応する設計を行いましょう。詳しくはそちらを見てください。
先ほど述べたようにリスクの評価は、異なってきます。
後で述べるツール等を使用した方法で先に対策の洗い出しと評価内容の検討を行なっていけば良いと思います。
機能に関しても、リスク評価をしないといけない
重要な箇所は「冗長化」
リスク評価をして、それでもとても重要な部分は「冗長化」(二重化)する必要があります。
「冗長化」とは、機能を二重化しておき一方が故障してももう一方が残っていれば対応して問題なく動作する回路やシステムのことです。
これは機能信頼度をあげる方法としてはとても良い方法です。ただし、コストはその分二重にかかります。
このように、バックアップを持たせた二重回路・システムというのは多くの箇所で使用されています。
・発電所
・金融関連システム
・安全回路
etc
リスク評価によっては冗長化を選択しないといけない
対策の洗い出しのツール
信頼性向上の対策の項で述べたように、品質基準は国や購入層によっても異なってきます。
未然防止為の変化点解析(DRBFM)
部品故障からの故障解析(FMEA)
故障からの原因解析(FTA)
を駆使していけば明確になります。
詳しくは、各項目の内容の際に説明したいと思います。
ツールを使用して明確にしてリスク評価につなげる
品質工学の分かりやすい本がこちらになります。
参考にしたい方はこちらからどうぞ。